WEB金蘭会

    小林 哲也氏






 
インタビュー風景



ハルカス
 
現在ご活躍の様子

そこから現在ご活躍のご様子をお聞かせいただきたいです。 いろいろ大変な経験をしておられますのでその時のこともお願いします。

一番印象的なのは、本社の常務になり、球団社長を兼任していた時に、野球事業からの撤退の仕事をやったことです。当時、本社の社長から「野球事業から撤退できないか」と言われまして、「まあやってやれない事はないだろう」とやることになりました。そういうことでしたので、いわゆる球団社長としての楽しみをほとんどやってないんですよ。キャンプに行って、いろいろ美味しい物を食べて、選手に「がんばれよ」とか、新聞記者に「よう来たな。うまく書いてくれよ」といった事をやる間が無かったんです。
結局、オリックスと統合するということになったのですが、基本的には、周りは反対でした。近鉄の株主総会の時に、一部の株主さんが、「すばらしい事や」と言ってくれたのが、数少ない賛成でしたね。一時的にですが株価も上がりました。だけどやっぱり、球団のファンというファンから、「けしからんやないか!」と批難されました。道を歩いても、電車に乗っても、寄って来て、「アンタ小林さんか、なんちゅうことするんだ」っていわれましたよ。

そうですか、つらいですね

特急に乗ると、横に座ったお客様がたまたま反対派の人だったりね。新聞記者は、家の前に十人以上張ってますし、会社の前にも張ってました。野球の連盟といろいろ話し合いをしている間も、ずっと張り付いていましたからね。

でも、社長も大変ですけど、奥様も大変じゃないですか?

大変だったと思いますけど、女房は性格が“ネアカ”なんですよ。 もし“ネクラ”だったら、精神的に参ってしまう心配もあったのじゃないかと思います。新聞記者が、電話をかけてきたり、家の外に張り付いたりしてますからね。女房は、だんだん新聞記者と友だちになって、「あっ、誰それさんハイハイ」って、玄関でわーわーしゃべって、「ちょっと今時間無いから、会えません。」というように上手に応対してくれていました。これは本当に感謝しました。

えらいですね。

やっぱり、ネアカって言うのはそういう意味では強いなあと思いましたね。

素敵な奥様で、よろしゅうございましたね。今日あるのは、奥様のお陰ですね。

そのかわりいろいろと指導されたり、指摘されたりすることもあります(笑)

いろいろとご活躍のご様子は,野球のほかにもたくさんありますね。 伊勢神宮で遷宮がありましたし、春日神社の遷宮もありますし、正倉院宝物展など話題になることが多いですね。

今年は、5月26日、27日に伊勢志摩サミットがあります。我々のグループは、以前から、鉄道、バス、タクシー、ホテル、旅館、レジャー施設と、様々な事業を伊勢志摩地域で展開してきました。これらの事業を行うものとして、今回のサミットをサポートさせていただくことになります。首脳会議が「志摩観光ホテル」で開催される予定ですが、このような国家的な行事をお手伝いできることは光栄なことです。我々としても失敗は許されませんので、伊勢志摩のグループ各社が心を一つに合わせて、しっかりやっていこうと思っています。

忙しくなられますね

当社は、昨年4月からホールディングス体制になっています。これまでは近畿日本鉄道株式会社が本社ということで、鉄道を経営しながら、不動産、ホテル、流通といった事業を統括していました。
しかし、鉄道会社が、事業をやりながら、その他の様々な事業の経営管理をするというのは、変化の激しい今の時代には無理があります。鉄道事業は事業の特性上、安全を最重視するという文化・風土があって、安定志向の事業です。お客様のニーズや世の中の環境変化に敏感に対応して、自由自在に商品を変えるとか、状況にあわせてやり方を変えるといった事には不向きな体質なんですね。 一方で、百貨店とかホテルとか、スーパー、旅行という事業は、状況にあわせてどんどん変えていかないと生き残れません。
このように、鉄道経営の価値観と、その他の事業の価値観が異なるので、ホールディングス体制に変え、近鉄グループホールディングスという会社に、グループ全体にまたがる経理や人事、経営戦略などの機能を持たせ、各事業会社の社長が、各々の文化・風土にあった経営を行うこととしました。
4月からこの体制で動き始めた矢先に、伊勢志摩サミットの開催が決まりました。伊勢志摩地域で事業を営む各社が、ホールディングス体制のもとで力を合わせて総合的に動けるような形にする、最初の大きなプロジェクトですので、大変ではありますが、やりがいもあると考えています。

大変ですよね

そういう意味では、仕組みを作りながらやってるんですけどね。ホールディングスにしてみてよくわかりましたけれど、会社の文化とか、人に例えれば人格とか、価値感とか、これはものすごく大きい要素です。鉄道の文化、価値感と、百貨店の文化、価値感とは全然違いますからね。

百貨店といいますと、ハルカスもすごいりっぱになられて、すごいですよね。

建物は、「300メートルの日本一高い建物にしよう!」ということで、しっかり「日本一」にできました。やはり「日本一」と言えることが、宣伝や販売促進では効果的で、非常にやりやすいですから。建物はしっかりできましたので、中身も「日本一」になるように、今いろいろと考えています。

現在のご活躍のご様子をおきかせください。 経営トップとしてご苦労があると思うんですけど。今どういう事に心を砕いていらっしゃるかお教えください?

先ほど言いましたが、ホールディングスに体制を変えました。近鉄グループは、ホールディングスの下にグループ会社が150社ほどありますが、これらが、メーカーさんとかのように、川上から川下までが縦でつながるグループじゃないんですよ。生産、輸送、小売りっていう形じゃなくて、鉄道があって、百貨店があって、ツーリストがあって、ホテルがあって、という横型のグループなんです。
グループ会社間に直接のつながりが無く、各々が独立しているグループ構成になっています。沿線に住んでおられる、あるいは沿線に来られるお客さんに対して各々がちゃんとしたサービスを提供して、ビジネスをしようという発想でやってきた。そうすると、考え方がそれぞれに違う。このように考え方が違う人達同士が、協力してやっていく事が重要です。たとえば近畿日本ツーリストという会社がありますが、ここが沿線にお客さんを連れてくるとか、どこかに連れて行く時に、バスや電車を使う、あるいはホテルで泊まるとか、グループ内での連携が求められます。どういう風にすれば、各社の社員が自主的に協力・連携するようになるのか、というのが一番難しいところですね。気の強い人、気の弱い人、それから堅い人、柔らかい人、性格的にも違いますし、ビジネスのスタイルも違いますから、それが最後は、「とりあえずまず協力体制をとろう」ということにならないといけません。人間がやることですから、そういうところがやっぱり気を遣うところでしょうね。
あと最近、鬱病のような「心の病」になる人達が少し目につくようになってきましたね。会社に入って来た時はそうではないのですが、まあ少し気が弱いところがあったにしても、面接試験をして採用してるわけですから。普通に入社して仕事している内に心を病んでしまう。「向かない仕事」、「合わない上司」、「ひどいお客さん」、だいだいこの三つが原因になっているようですが、これをグループ内での人事異動などを通じて適材適所に配置できるようにして行き詰らないような仕組みにできないか、考えないといけないと思っています。

昔の労務管理とはまた変わってきてるんですか?

そうですね、昔の労務管理っていうのは、わりに形式的にやれて、それで良い部分もありましたけれど、今は、難しくなりました。例えば、セクハラと言いますが、ある行為がセクハラかどうかという基準はありません。もちろん、「誰が聞いても」というのはあるとしても、基本的に行為を受けた人がどう感じるかということによります。セクハラをされたという人が、されたと思ったらセクハラ。だから、頭をなでて「ようやってくれてるな。がんばってな」と上司が言ったのが、部下の思う「いい上司」、「好きな上司」だったら問題ありませんが、「嫌な上司」だったらセクハラになるわけで、結局、基準っていうものが不確定ですからね。それを理解できない現場の上とか、そういう人達が、可哀想なことになってしまいます。50歳代のいい年の人で、「君、どうしてそんなつまらん事やったんだ」って聞くと、「いやー、私は今までこれで、皆から人気があったんです」というんです。「背中やおしりをパーンとはたいて、「がんばれよ!」って言ったら、「はい!ありがとうございます」と皆喜んで仕事をしてくれた。ところが今回はダメだった」と。

違いがはげしいと

そうなんですよ。結局、職場のパワハラにしても、セクハラにしてもそうです、いろんな指導監督についても上手にやらなければいけないですから。

 

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ページ作成 S53年卒岸政輝&H5年卒倉本到