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金蘭会セミナー


第102回
平成18年10月20日(金)
演題
生活習慣病
講師
豊 絋氏(昭和34年卒)
関西医大男山病院 院長

豊 絋 (ゆたか ひろし)氏 プロフィール

和歌山県立医大卒。 関西医大男山病院長(内科部長)

医育機関で長年、医学生の臨床実習に携わってきました。
臨床医としては、生活習慣病を中心にした循環器を専門にしています。
診療のスタンスをできるだけ内科の中心におき、 総合診療医として患者様
の診療ができるように努めています。 来て良かった病院をモットーに患者様
に安心と満足をして頂ける病院作りを目指しています。






































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 最近話題のメタボリックシンドロームについて、人類の歴史的、文明的進化過程にまで話を遡りながら、生活習慣病の原因と、その予防および治療について、自らの臨床体験を交えながらの講演であった。

●<メタボリックシンドローム>とは、
健康的に良くない生活習慣(過食、たばこ、運動不足、飲酒など)が原因で、 死の四重奏(肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症)を複合し、 虚血性心疾患、がん、脳卒中 になる率が急激に高くなっている状態をいう。

これらの危険因子に関連する事項について、順を追って懇切丁寧に説明された。

●冠動脈に異常を及ぼすリスクファクター(危険因子)と相対危険度
危険因子                相対リスク 
(1)なし 1.0
(2)喫煙                   1.6 
(3)喫煙+糖尿病               3.5              
(4)喫煙+糖尿病+高血圧           7.4
(5)喫煙+糖尿病+高血圧+男性        17.0
(6)喫煙+糖尿病+高血圧+男性+65歳以上   40.8

男性が女性より寿命が約7歳低い理由がよくわかった。

●人類は、進化の過程で食料不足の狩猟、農耕時代を経てきた。
人が生きていくために重要な次のような栄養素を、<倹約し体内に蓄える遺伝子>を受け継いできている。
・塩(塩分)、米(炭水化物)、魚、肉(脂肪、蛋白質)、水分、カルシュウム

●感染、炎症、外傷への対応
白血球・リンパ球・貪食細胞がこれらに対応するため、集まってくるが、一方情報伝達物質である「サイトカイン」が分泌され、殺菌や免疫等の情報を出している。
このサイトカインには悪い情報を出して、逆に混乱を起こすことがある。
何らかの原因でサイトカインの大量放出が起こると、例えば「白血球が自分の赤血球を食べてしまう」様なことが起こり、若い人が短期間に亡くなるようなことも起こる。

●節食の3R
Refuse   食べずに済ませないか
Reduce  量を減らせないか
Review  他のものにおきかえらえないか

●カルシウムの調節
カルシウムは筋肉の収縮や、細胞間の情報伝達に欠かせないものであるが、骨の中に蓄えられている。20歳ぐらいが最も多い。
血液中のカルシウムは骨を溶かして調節されている。カルシウムが不足すると → 骨粗しょう症

●血糖の調節
血糖を上げるホルモン(グルカゴンなど4種類)
血糖を下げるホルモン(インスリンのみ)
歴史的な食料不足気味により、<倹約遺伝子>により低血糖に対する防御機能が発達し、血糖を上げるホルモンが多い。

●メタボリックシンドロームの診断指標
下記のうち2つが該当すれば、危険である。
(1)腹部(へその位置)肥満 
   男性≧85cm  女性≧90cm
(2)中性脂肪 ≧150mg/dl
(3)HDLコレステロール ≦40mg/dl
(4)血圧 ≧130/85mmHg
(5)空腹時血糖 ≧110mg/dl

●肥満の指標
BMI:体重(kg)/身長(m)×身長(m)
標準BMI値:22
BMI:25以上 肥満
BMI:30以上 要治療

この値が高い人は、まず無理せず体重の5%を下げる努力を!

●悪いのは内臓脂肪(皮下脂肪は悪くない)
内臓脂肪細胞からいろんな「サイトカイン」が分泌されており、このサイトカインのなかに、インスリン抵抗性や、高血圧を起こすものが含まれている。

●内臓脂肪の脂質の分類
善玉脂質:HDL(蛋白質が多い)
悪玉脂質:LDL(コレステロールが多い)
単純にLDLの値だけで、判断するのではなく、他のどんな危険因子を持っているかを勘案して対応すべきである。

●糖尿病
すい臓からでるインスリンが少ないことが原因。
最近はインスリンが出ていても、その使われ方が良くない場合(インスリン抵抗性)も起こる。
この抵抗性の予防策も、他の生活習慣病予防策とほぼ同様。適度の運動が最も安くて良い。

人間の体内で働いているいろんなホルモンなどは、状況によってはその働き方は、良くも悪くもなるということ。
そして、生活習慣が悪ければ悪いほど、悪い働きが顕在化し、心疾患や脳疾患まで進行する確率が急激に高まるということのようだ。

急激な高齢化に伴い、医療費の増大が社会問題となっており、この増加を抑えるためにも「治療より予防」につながる、生活習慣の改善が急務であると感じさせられた。  

(リポート町田)


タバコは止めよう!
そして 歩こう!

要治療者はまず、体重の5%を減らすことを目標に。

飽食の時代に考えてみたい。

 

人生は『 白駒の隙を過ぐるが如し(はっくのげきをすぐるがごとし) 』 〔荘子<知北遊>〕だと思いませんか。

今日が残された人生の最後の日、と思って生きる。豊先生曰く・・・「今、このお話をさせていただく、この時間が私にとって大事です。」 

 

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ページ作成 S53年卒岸政輝 & S50年卒谷村瑞栄&リポート34年卒町田&カメラ50年卒前渕