WEB金蘭会
金蘭会セミナー


第149回
平成23年6月17日(金)

演題
「昭和20年代と新聞連載小説」
講師
森 延哉氏 (昭和30年卒)
元大阪府立大手前高等学校国語科教諭
 


講師


森 延哉氏  プロフィール

元大阪府立大手前高等学校国語科教諭




『若く明るい歌声に −新聞小説と<戦後>−』
 『若く明るい歌声に
      ―新聞小説と<戦後>』
森 延哉氏著














『駒とめて袖うちはらふ −謡曲「鉢木」考』
 『駒とめて袖うちはらふ
       −謡曲「鉢木」考』
森 延哉氏著





セミナー後の懇親会での お弁当と
季節の本格和菓子です。

第148回金蘭会セミナー 感想文




(感想文  昭和50年卒 小林一則)

  森延哉先生の講演を聞いて


 ♪若く明るい歌声に〜と聞くだけで、心はずむ世代は少なくないだろう。セミナー
会場では特にそうだ。「昭和20年代と新聞連載小説」の演題だが、会場はその
ころ、同時進行で新聞小説を読んでいた人も目立ち、森先生の話に大きくうなず
いていた。

 石坂洋次郎の「青い山脈」、獅子文六の「てんやわんや」、林芙美子の「めし」
など昭和20年代の新聞小説を紹介しながら、その時代背景を考察。「青い山脈」
で女学生が米を売りに来るのは何故か。戦後間もないころ、闇米拒否の判事が
栄養失調死するのがニュースになる時代に、女学生はどうして米を売りに来たの
か。 ところが映画では、米でなく卵を売りに来たことに変わっている。

 はたまた男女交際という言葉さえ、どきっとするような戦後ほどないころ、若い
2人の恋の展開に読者はわくわくし・・。そもそもこの時代、新聞は裏表の2頁しか
なく、文字も今と違ってとてつもなく小さくて・・。卵といっても病院の見舞いに持参
するもので・・。「延哉ワールド」は本線をはずれて脱線また脱線。高校の授業の
ころは、この脱線話ばかりを覚えていた御仁も多いだろう。

 「若く明るい歌声に」がそのまま先生の著書のタイトルになり、副題に「新聞小説
と<戦後>」。新聞小説の評論風だが、小説の書かれた昭和20年代の世相史に
なっており、講演でも「小説のタイトルを聞くだけでわくわくする」という人も。

 また、手を上げて質問した高女の先輩は「私の名はシズコ。菊池寛の新聞小説
『第二の接吻』の主人公にちなんで父がつけました」と話され、びっくり。倭文子と
書いてシズコ。小説は大正14年の朝日新聞に連載されたものだ。ちなみに妹
さんの名は同じ菊池寛の新聞小説「真珠夫人」に登場の瑠璃子だとか。いやはや
講演にはタイムリーな先輩でありました。こんなエピソードが聞けるのも金蘭会
ならではでした。

 

 




(感想文  昭和50年卒 仲野 徹)

  「昭和20年代と新聞連載小説」を聴いて


 「恩師である森延哉先生のお話を35年ぶりに聴ける」ということで、同期生何名
かとの参加。講演前の森先生は「たくさんの人の前で話をするのが久しぶりなので
少し心配」とおっしゃっておられたけれど、なんのなんの、金子みすゞの『こだまで
しょうか』をつかった「つかみ」から、どんどんお話に引き込まれていきました。

 正直なところ、「戦後“の”新聞小説」の話をされたら、世代的にようわからんし
寝てしまうかも、と少し案じていたのですが、まったくの杞憂でした。その内容は
「戦後“と”新聞小説」で、新聞小説から時代をどう読み解くか、そして、逆に、その
時代をわかっていないと小説の読み方を間違えてしまう、という、「メタ読書論」とも
いうべき内容で、さすがは森先生と、えらく感心。

 戦後の新聞のコピー回覧で時代を感じさせてもらいながら、森先生が教師に
なられる前に広告会社に勤めておられたエピソードや、石坂洋次郎の『青い山脈』
の登場人物についての解説など、あっという間の一時間でした。「現役時代から
脱線が多くて」とおっしゃりながら脱線話に突入していかれるところや、ちいさい
ギャグをおっしゃった後になんとなくちょっと恥ずかしそうにされるところなど、時空
を超えて、高校時代の教室に戻ったような感覚に陥ってしまいました。いやぁ、
こっちはえらく歳とりましたけど、森先生、まったくお変わりになられないですね。

 森先生の恩師である岸田先生も90歳を超えて元気に来聴しておられたのには、
さすがに驚きでした。
  森先生は、その岸田先生から、前著 『駒とめて袖うちはらふ −謡曲「鉢木」考』
を書くインスピレーションをいただいた、というお話をしておられました。それと同じ
ように、高校で三年間「現代国語」を教えてもらっただけでなく、いつまでも森先生
からいろいろなことを教えていただけてるんやなぁと、ほっこりした気持ちになった
ひとときでした。

 セミナーに参加された方はもちろん、参加されなかった方も、
そして、戦後を知っておられる方も知らない方も、ぜひ、森先生の
新著 『若く明るい歌声に −新聞小説と<戦後>−』(文芸社刊)を、
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