WEB金蘭会
金蘭会セミナー


第150回
平成23年7月15日(金)

演題
「私たちのくらしと遺伝子」
講師
林崎良英氏(昭和50年卒)
独立行政法人理化学研究所 オミックス基盤研究領域 領域長
 


講師写真

林崎良英氏 プロフィール

略歴:
 昭和57年 大阪大学医学部医学科卒業
 昭和61年 大阪大学医学部大学院博士課程内科系卒業 医学博士取得
 平成 4年〜平成6年  理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センター、ジーンバンク室研究員
 平成 7年 理化学研究所ゲノム機能解析研究グループ、プロジェクトリーダー
 平成 7年〜平成22年 国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学研究科、客員教授兼務
 平成10年〜平成20年

理化学研究所ゲノム科総合研究センター遺伝子構造・機能研究グループ、
プロジェクトディレクター

 平成15年〜平成22年 スウェーデン王立カロリンスカ研究所客員教授兼務
 平成15年〜  クイーンズランド大学(オーストラリア)Honorary Professor兼務
 平成16年〜 東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科 非常勤講師兼務
 平成18年〜平成20年

理化学研究所フロンティア研究システムRNA新機能研究プログラム、
プログラムディレクター兼務

 平成20年〜 理化学研究所オミックス基盤研究領域 領域長
 平成20年〜平成22年 京都大学大学院客員教授兼務
 平成 22年〜

Science for Life Laboratory(SciLifeLab) (スウェーデン)
Scientific Advisory Board

受賞:
 平成 7年 東京テクノフォーラムゴールドメダル賞“高速ゲノム解析法の創出”
 平成13年 つくば賞
 平成16年  文部科学大臣賞
 平成18年 科学技術への顕著な貢献in 2005
 平成19年 紫綬褒章
 平成22年

日本遺伝学会木原賞、持田記念学術賞



















"バナナのDNA"のペンダントトップ





講師を囲んで50年卒のミニ同窓会





セミナー後の懇親会での お弁当と
季節の本格和菓子です。

第150回金蘭会セミナー 感想文


(感想文  昭和50年卒 合川正弘)

 
  遺伝子に関する研究は今どこまで進んでいて、今、医療などにどう役立って
いるのか(その将来は)?

 これが、今回の林崎先生の「私たちのくらしと遺伝子」のセミナーのテーマであった。
彼とは高校のクラブ(卓球部・音楽部)以来の付き合い。今や世界最先端のオミックス研究(遺伝子・
ゲノム研究からさらに進んだ分野らしいです)の泰斗が、「紅顔の美少年」、サービス精神旺盛な
大阪のやんちゃ坊主だった姿と30余年たってどう変わっているか、を楽しみに、3日前に誘いの
電話を入れてくれたN氏のおかげで旧交を温めるべく、セミナーにお邪魔させていただいた。(セミ
ナー内容のとおり、遺伝子で規定された本質は少しも変わることはありませんでした)

 高校時代の遺伝に関する知識は、メンデルの法則からDNA、RNAが染色体の中で遺伝子を伝
える重要な働きをしてくれる・・・程度だったと思う。それに新聞の科学欄での聞きかじりの知識を
上書きしている程度のレベルの私(150回を数えるセミナーの熱心な聴講生の先輩方はもっと
知識がおありだと思うが・・・)にも頭に入りやすいように、林崎先生は、大阪弁で(日常は東京弁、
学問レベルでは世界中を英語で駆け回っておられるはずなのに)、分かりやすく楽しく遺伝子の
ことを解き明かして話していただき、お土産にバナナの遺伝子もいただいた。「宿題」にこの原稿を
委ねられた私としては、必死に内容を理解しようとメモを取った・・・

 今回のお話で特に記憶に残ったことは(理化学研究所のHPなどで“追加取材”したことも補足)、

1)ヒトは父と母の遺伝子を受け継ぐ一つの受精卵から分裂した60兆個の細胞で構成されるが、
  すべて同じにコピーされるDNA、RNA仕組みはあらゆる生物で共通。
  Dr林崎が開拓された遺伝子解析システムを基礎に世界中で日進月歩で遺伝子を活用する研究が
  進んでいること(本人も次なる研究に熱い情熱を燃やしておられます)

2)ヒトを含め、生物の遺伝子=4つの塩基(a,c,g,t)の配列が解読されたことにより、遺伝による
  問題(がん、アルコール受容、アルツハイマー等)において、遺伝子配列を踏まえた対応が医療
  の面から可能になりつつあること

3)諸外国、特にアメリカと中国の底力。大きな投網を掛けてしまう多分野での研究をバックアップ
  する力、その中から将来性あるものを見極める確かな眼力、そこへの集中投資する財力。 これら
  トータルの戦略性の重要なこと(一方で、わが国の科学技術政策の志の低さと、個々の研究者
  の努力の尊さに頼っている現状への危機感が募るばかり)

 将来のわが国を担う現役の後輩達に林崎先生のような先達の話を是非拝聴する機会を設けて
いただきたいと、切に願うひと時であった。

           

(感想文  昭和50年卒 小林智子)

 
  同級だった林崎さんですが、私にとっては、同じ音楽部での活動や、文化祭でバンドを組んだり
した頃が思い出され、約20年ぶりにお会いできる懐かしさもあって、セミナーに参加させていただき
ました。

 講演は、昔と変わらぬ優しい笑顔と大阪弁で…最先端の情報を分かりやすく伝えるのに心を配ら
れたお蔭でしょうか、皆、身を乗り出すくらい熱心に聴いていたように思います。

 興味深かった点をいくつか挙げますと…

 顕微鏡の中での話だと思っていたDNAやRNAが、肉眼で見える「もろもろしたDNA」と「さらさら
したRNA」という沈殿物として見られたのは驚きでした。

 皆にプレゼントされた「バナナのDNA」のペンダントトップは、事業仕分けの経費削減で、以前
付いていたチェーンが無くなってしまったという話も、面白かったです。

 数字に驚くことも多くありました。

 DNAは、4種類の塩基の並びが、親から子へ受け継がれる遺伝暗号になっていて、その数は
30億個もあること。たった一つの染色体DNAを伸ばすと、ヒトの場合1.8メートルにもなること。
ヒト一人の全細胞(約60兆個)が持つDNAを全部つなぐと、月と地球3000往復分にもなること。また、
30億個を文字にすると、新聞200年分にもなること。

 ここまでくると、神様の成せる業ではないかと思うほど神秘的で、生命の素晴らしさを感じずには
いられません。林崎さんは、「DNAは、神様が作った何かではなく、『物質』です!」と言われましたが…

 また、30億個の文字のうち、わずか1個の文字の違いが体質の違いにつながることがあること。
それなのに、約1%(100個に1個の文字)の違いだけで、ヒトとチンパンジーの「種の違い」ができて
しまうこと。これは、意外な数字でした。

 DNA解析の機械、シーケンサーの発達スピードにも驚きました。わずか20年前には4000年も
かかると言われてきたDNAの解析が、来年には40万円で、8分で出来るだろうということ。しかし、
現在行われている70%は中国だというのも、やはり…という感じです。

 アルツハイマー病発症のグラフも衝撃的で、脳の神経細胞が死んでしまうアルツハイマー病の
可能性は、高齢になってからではなく、ヒトが生まれる前、受精卵ができた時点で既に決まって
いるというのも、意外でした。

 我々が最も心配する病気の一つであるアルツハイマー病やパーキンソン病も、遺伝子配列を調
べ ることで発症を防いだり、遅らせたりできるとのこと。「発症してからでは遅い。なぜなら、死んだ
細胞は生き返らないのです!」が印象的でした。遺伝子診断を受けて、自分自身のことを知りたい
と思ったのは、私だけではないと思います。近い将来、その診断結果を見て、自分でも健康管理が
できるようになるのでしょうか。

 発症する前に予測・予防する先制医療のための遺伝子検査。発症したとしても、一般的な対症
療法ではなく、遺伝子検査によってその人に合う治療法を見きわめ、本当に必要な薬だけを上手に
投与するような「適剤適者」。早く一般的になれば嬉しいです。

 私は、その分野の専門知識も無くセミナーに臨みましたが、最後まで興味深く聴くことができました。
どうも有難うございました。

 林崎さんには、今後とも、遺伝子研究の第一人者として、益々ご活躍されることを願います。
金蘭会セミナーご関係者の皆様にも、感謝いたします。



150回金蘭会セミナー講演の後、15期の皆勤賞の表彰が行われました。

   上川副会長から皆勤賞の授与  
・・ ・・・

 

セミナーの当日スライドです。








































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