「3月11日後の科学」
概要
東日本震災は、科学の在り方を巡って、様々なことを問いかけられている。
特に原子物理学を専門とし、湯川秀樹先生の研究室で育った私には、
今回の福島事故を通して、原子力研究のたどってきた
経緯を見つめなおす機会となった。
また、低線量放射線の生体への影響の知見について、
生物学者と交流する機会を得て、
分野を横断する科学者のネットワークがいかに大切かを痛感した。
こうした経験を踏まえて、女性物理学者として改めて
深く考えることとなった「科学と社会のありかた」
について問題提起してみたい。
女性研究者の地位の向上に関する坂東昌子氏のプロフィール
1960年京都大学理学部物理学科卒、65年京都大学理学研究科博士課程修了、京都大学理学研究科助手、
87年愛知大学教養部教授、91年同教養部長、2001年同情報処理センター所長、08年愛知大学名誉教授。
専門は、素粒子論、非線形物理(交通流理論・経済物理学)。研究と子育てを両立させるため、博士課程の時に
自宅を開放し、女子大学院生仲間らと共同保育をはじめ、1年後、京都大学に保育所設立を実現させた。
研究者、父母、保育者が勉強しながらよりよい保育所を作り上げる実践活動で、京都大学保育所は全国の
保育理論のリーダー的存在になる。
その後も「女性研究者のリーダーシップ研究会」や「女性研究者の会:京都」の代表を務めるなど、女性研究者の
積極的な社会貢献を目指す活動を続けている。02年日本物理学会理事男女共同参画推進委員会委員長(初代)、
03年「男女共同参画学協会連絡会」(自然科学系の32学協会から成る)委員長、06年日本物理学会長などを務め
、
会長の任期終了後も引き続き日本物理学会キャリア支援センター長に。09年3月若手研究者支援NPO法人
「知的人材ネットワークあいんしゅたいん」を設立、理事長に就任。
・「4次元を越える物理と素粒子」(坂東昌子・中野博明 共立出版)、
・「理系の女の生き方ガイド」(坂東昌子・宇野賀津子 講談社ブルーバックス)、
・「女の一生シリーズ−現代『科学は女性の未来を開く』」(執筆分担、岩波書店)、
・「大学再生の条件『多人数講義でのコミュニケーションの試み』」(大月書店)、
・「性差の科学」(ドメス出版)など著書多数。
坂東昌子氏のホームページ