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金蘭会セミナー


第157回
平成24年4月20日(金)

演題
科学技術の発達 ー我々は何処に行くのかー
講師
眞弓忠範(まゆみ ただのり)氏(昭和34年卒)
大阪大学名誉教授 神戸学院大学名誉教授
元大阪大学副学長、元神戸学院大学学長
 


眞弓忠範氏 プロフィール

( 略歴 )
 1964年 大阪大学薬学部卒業
 1966年 大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了
 1969年       同上    博士課程修了
大阪大学薬学部 助手(生理化学)

 1973年

米国アラバマ大学医学部 博士研究員(分子細胞生物学)
━哺乳動物における蛋白合成メカニズムの研究━

 1975年 神戸学院大学薬学部 助教授(生理化学)
 1980年   同上    教授(生理化学講座担当)
 1985年 米国ペンシルベニア大学ウィスター研究所 客員教授(分子細胞生物学)
━受精卵の核移植、遺伝子導入に関する研究━
 1989年 大阪大学大学院薬学研究科 教授(薬剤学講座担当)
 1993年 大阪大学 薬学部長・大学院薬学研究科長
 1998年 大阪大学 副学長
 2004年 大阪大学停年退官(大阪大学名誉教授)
神戸学院大学大学院薬学研究科 教授、神戸学院大学 学長
 2008年 神戸学院大学ライフサイエンスセンター長
 2011年 神戸学院大学定年退職(神戸学院大学名誉教授)
   

( 研究内容 )
 1)遺伝子治療の最適化に関する研究
 2)人工蛋白の創製とバイオコンジュゲーション
 3)細胞送達システムの構築と細胞性製剤の粒子設計
 4)腫瘍免疫・粘膜免疫ワクチンに関する研究

( 公職など )
 文部科学省関係 ; 文部省学術審議会専門委員、日本国際教育協会理事、大学評価専門委員長、 大学入試センター運営委員、国立学校財務センター運営委員など

 厚生労働省関係 ; 中央薬事審議会委員、高度先進医療専門家会議メンバー、薬事・食品衛生審議会委員、ヒトゲノム・再生医療等研究推進専門委員、創薬等ヒューマンサイエンス総合研究専門委員、三省(文科省、厚労省、経産省)合同研究事業最終審査委員長など

 学術・学会関係 ; 日本薬学会理事、副会頭、同学術委員長、日本DDS学会理事、同会長、日本香粧品科学会副理事長、同会長、日本学術会議会員、私立薬科大学協会理事など

 






















セミナー後の懇親会での お弁当と
季節の本格和菓子です。

第157回金蘭会セミナー 感想文


 

(感想文 花崎紘一 昭和34年卒) 

 同期生であり日頃から親しくしている真弓君の講演を聴くのは初めてであったが、
多岐にわたるテーマを理路整然と説明され、中には難解な内容もあったが、熱意の
こもった説明ぶりに私も多少解ったような気にさせて貰った。

 講演内容は、100年ほど前から急速に発達し人類に貢献してきた医療科学の
背景の説明と、最先端技術が抱える問題点の提起であった。

 私が興味を持ったのは、例えば「モナリザ」「ハムレット」「運命」などの芸術遺産の
創作活動が、感染症でいつ死ぬかも知れない、ここに書くのを憚るほどの不衛生な
生活環境の中でなされていたことであった。現在では科学技術の進展により公衆
衛生が普及し、もはや死は「感染症=外からの敵」によるものではなく、「高齢」が
もたらす時代になっている。

 この「高齢」が死に結びつく「内なる敵」の説明として遺伝子と生殖医療を挙げ
られた。例えば精子バンクの問題として、最初は純粋に不妊治療を目的としていたが、
いまや生まれてくる子供の質までを要求するようになり、優生思想に基づくビジネスを
産み出してしまっている。さらに驚いたのは、先に生まれた子供の遺伝子疾患の
治療のために、ドナーベビーを出産しスペア部品として使うということがすでに行わ
れているという話であった。
その他、今話題のES細胞、iPS細胞とエピジェネティックと呼ばれるパラダイムに
ついて紹介された。

 講演の纏めとして、とりわけ医療分野における最先端技術は直ぐにビジネスチャンス
に結びつけられる傾向にあり、倫理問題ばかりでなく、ホモエコノミニストの暴走により
人類を破滅に導きかねない。ここで我々は一旦立ち止まり、科学は人類にとって
どうあるべきかを考えなければならないと訴えられた。

医療に限らず、原発はもちろん自動車、ITなど科学技術の功罪を見直す時が来て
いることは確かだと同感した次第である。


       

 

(感想文 森道子 昭和34年卒) 

 真弓さんは薬学部のご出身なので、薬学系のお話であろうと勝手に予想して
いました。

 地球の発生のカレンダーから始まって、人類の登場とその環境の説明に最初は
少し戸惑いましたが、あっという間に、現在の先端的な話題の解明につながり、
議論の運び方に感服しました。科学的・医学的・薬学的知識や情報の関連を
包括的に系統的に学ばせていただきました。ヒトゲノム配列、遺伝子配列、塩基対、
体外受精、代理出産、クローン技術、ドナーベイビー、ES細胞、iPS細胞など、これまで
バラバラだったキーワードが少し整理できました。

 印象的だったのは、人類は登場したときからすでに、自ら拠って立つシステムを
自ら破壊してきたこと、遠く長い時を経て限りなく発展し続けている科学は人間の
限りない欲望に基づき、現代ではビジネスと強く結び付いて、ホモ・サピエンスの
ためではなく、ホモ・エコノミクスのためのものになってしまっていること、そのため、
倫理的問題も限りなく大きくなっているということでした。「われわれは今こそ立ち
止まって考えなければならない」との結論に大いに共鳴した次第です。


       

 

セミナーの当日スライドです。




















































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