『いじめ』
塩見氏の講演は、小中学校時代悪ガキで先生を困らせていた彼が、皮肉なことに
小学校の教師そして校長にまでなって、いじめやモンスターペアレンツに対応せざるを
えなくなったことをにこやかに語るところから始まりました。
講演内容は大変充実していて、いじめの定義から始まり、原因、特徴、子供たちの
動きなどを分析し、どのようにしていじめが起こるかを分かりやすく解説してくれました。
教師として塩見氏が事に対し真摯に対応してきた経験を踏まえ、いじめ撲滅には、
まず学校内での組織的な対応体制を確立すること、また学校が中心となっていじめ
対策の具体案を「関係する全ての大人が共有すること」が大切だということなど、共感
できる所が多い内容でした。
また、ちょうどこのセミナーの日が奇しくも12月14日、赤穂浪士の討ち入りの日である
事に彼が触れ、「昔からいじめはあり、なくならない」との話しもありましたが、
私にも小学生の時に経験した『いじめ』にまつわる強烈な思い出があります。
あれは四年生の時でした。教室でY君と一緒に担任の先生に呼び出されていきなり、
「何故呼び出されたかわかっているでしょう、ここで全て白状しなさい。」 私にはなんの
ことやらさっぱり判らず黙っているしか術がありませんでしたが、先生は
私がわざと
とぼけていると判断し、なんと強情な子かと呆れている様子でした。 Y君は
私同様沈黙
を守っていましたが、何故かしくしく泣き始めました。
実は同級生の一人が家業の文房具を或る同級生に恐喝され持ち出そうとしている
ところを母親に見つかり、その同級生の仕業と白状するのが怖くて私を主犯に仕立てた
のでした。
彼女は激怒し、特に教室のリーダー的存在であった私の卑劣な行為を許せないと
先生に訴えたのでした。
先生に呼び出された母は私の濡れ衣を信じてくれましたが、学期終了時にもらった
通知簿には「ボス的存在」と記されてありました。
卒業までクラス替えがなかったので、私を避け続ける二人には永くて耐え難い日々
だったことでしょう。
「いじめ」は言うまでもなく卑劣です。「いじめ」る者がその卑劣さに
気付かず軽い
気持ちでしてしまうところに実は問題があるのです。そしてそれに気付いた時「いじめ」
た者の心の傷は果てしなく深いと想像できます。
塩見氏の講演は「いじめ」と言うともすれば暗くなりがちな話題にユーモアを交えて
話してくれ、教育現場の経験にもとづく話はわかりやすく説得力もあり充実した講演でした。