講師山下さんは同級生で、ときどき会う機会もありますが、講演を聴くのは
今回が初めてでした。
テーマは、「料理で脳トレ!料理で健康!」。「ただ仕方なく」料理をしてきた
私にとって、何か料理に対する考え方が変わるチャンスかもしれない・・・そんな
期待とともに参加しました。
お話が始まってまず惹きつけられたのは、山下さんの和やかな笑顔と艶や
かな声でした。表情も若々しくて、お肌もつるつるピンク色。テーマをそのまま
自分自身で示しているかのようで、前に立って話す人が明るく晴れやかだと、
聴く人たちもリラックスして楽しそな様子に見えました。
そして、料理の始まりが人類の誕生と大きく関わっていることを、文化人類学者
の研究から取り上げたり、料理をしているときに脳にどんな反応が起こるのかを
実験したデータが紹介されたり、さらには最近減少した「火をおこして使う」という
行為を、次世代育成のために「火育」と呼んで子供達に活用していることなど、
テンポ良く話は続きました。
中でも、シニア男性が料理をすると明らかに脳に反応が出たというデータは
特に興味深く、これからのシニア男性が料理に興味を持てば、ご本人にとっても、
又家族にとっても、さらに社会全体へも良い影響が現れてくるに違いないと
嬉しくなりました。そして、今まで料理をしていた人が止めてしまうことも体に
良くないそうで、今後は楽しむ料理を心がけたいと痛感しました。
話が進む中で、私たちは自分自身のためにどんな生活を心がけないといけないのか、
そして、エネルギーに関する問題やこれからの世代のために何が必要なのか、
いろいろなことを考えさせられました。
又、多方面の角度から料理についての話を聞いたあとには、料理について
熱い気持ちになっていました。料理は、自分のために、人のために、大切な想いを
込めて、さらにそれを伝えられる一番身近な手段なのかもしれないと。
料理は生活に密接に関わっているけれど、あまりに日常的で、料理を起点にして
深く物事を考えることはなかったような・・・。そんな私たちが「料理する」ということに
改めて関心を持つ、これが今回の狙いだったのかもしれません。
終始スムーズな展開はさすが山下さんならではでしょう。大阪ガスで料理や
食生活全般に長年関係してきた企業人としての見識、大学で栄養や食品・食文化を
研究する専門家としての知識、そして、家庭人として家族の健康を得意の料理で
守ってきた経験、それらの全てがバランス良く混ざり合って、話のいい味となっていました。
付け加えるなら、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて記憶に新しく、
登録のために公私ともに尽力したという山下さんの和食への愛情は小さなコメントにも
溢れていました。
さらに、長年京都に住み、茶道の世界に精通し、懐石料理作りまでこなす多彩な
バックグラウンドは、お話全体に彩りを添えていました。時間通りにきっちりと終わり、
もっと聴きたいと残念な気持ちになった人は他にもいたでしょう。次回はぜひ、
お着物姿で、特に和食についての雅なお話を楽しみにしています。