WEB金蘭会
金蘭会セミナー


第182回
平成26年10月17日(金)

演題
黒田官兵衛と戦国武将たちの寿命戦争
講師
若林利光氏(昭和46年卒)
若林医院院長・作家
 


若林利光氏 プロフィール

略歴:

神戸大学医学部卒業後、脳神経外科学専攻。
専門は脳卒中。若林医院開設後、診療の
かたわら医学随筆を執筆。

国際外科学会会員。兵庫県脳外科・神経内科診療所医会副会長。日本ペンクラブ会員。

兵庫県医師会医学研究賞、日本文芸大賞特別賞などを受賞。

著書に、『脳梗塞の予防&撃退法』、『偉人たちのお脈拝見』、
『ピンピンコロリの生き方』、『寿命戦争・武将列伝』など。

 










セミナー後の懇親会での
お弁当です。

第182回金蘭会セミナー 感想文

(感想文 大鍛治和美  昭和46年卒 )

 
 

 平成20年2月の第115回のセミナーに続き、2回目の登場となった若林先生。
パソコンを使わないで皆の心をとらえ、1時間があっと言う間に過ぎる話術は、
教師をしている私には羨ましい限りです。

 今年のNHK大河ドラマの主人公「黒田官兵衛」を、作家でもある先生が 医師の
目で分析されて、梅毒罹患説をものの見事に一刀両断。 有岡城での幽閉事件が
原因のケルルス禿頭と脚気の合併症と結論づけられたのには大いに納得。そこ
からビタミンB1の必要性を説かれたのは、さすがお医者様。すんなり今後食べて
いこうと思わせられました。 

 時間ピッタリの講演後の質問で、皆が爆笑して楽しい雰囲気の内に終えられた
のは流石です。貴重で楽しいお話をありがとうございました。





(感想文 加藤かず  昭和35年卒 )


 10月17日(第3金曜日)金蘭会館に90余名の卒業生が集い、昭和46年ご卒業の
若林医院院長で、作家の若林利光先生のお話をお聞きしました。その要旨を先生
のレジュメ及び講演要旨より抜粋しご報告致します。

 戦国武将には豪放磊落、粗暴、残虐、大酒、好色などのイメージがつきまといがちで、
この好色というイメージと戦国時代には実際に梅毒が隆盛だったということがあいまって、
戦国武将たちには梅毒の感染が指摘される例が多い。

 彼なしに豊臣秀吉の天下は無かったというほどの名参謀、黒田官兵衛(孝高)も
その一人で、梅毒が持病であったという説が根強い。実際、素人目に梅毒と思われる
頭の皮膚病と晩期梅毒の脊髄癆と思われる歩行障害があった。これらの官兵衛の症状には、
ある事件が関係していた。

  官兵衛は、織田信長に厚遇されていたにもかかわらず、反信長に転じた。旧知の
荒木村重を説得する為、村重の居城、有岡城に出向いて行ったが、逆に幽閉されて
しまった。

 官兵衛の入れられた牢は土牢と言われている。高温多湿な時期の土牢では、ノミ、
シラミはもとより、あらゆる皮膚病を発症する。頭部の病変は、かさぶたとなり、梅毒と
まぎらわしいケルスス禿瘡がもっとも考えやすい。ケルスス禿瘡は多数の硬結や膿瘍が
融合した肉芽腫性の脱毛病変が特徴で、原因は白癬菌で、その赤くただれた外観は、
当時の人々の目には梅毒と区別出来なかっただろう。

  次に下肢のマヒについて、食事が質量とともに劣悪なため栄養失調だったとも考え
られる。一年もの間、有岡城の劣悪な環境の牢内で苛酷な日々を送り、有岡城の
落城でようやく救出された時には目を疑うほどに衰弱していた。その後、療養につとめた
ものの、頭のかさぶたと、下肢のマヒが残ったとも考えられる。

 ところで、三木の干殺しと称される兵糧攻めで三木城の別所氏を滅ぼした秀吉軍は、
有岡城の幽閉から救出された官兵衛を擁し、その後も鳥取の渇え殺し、備中高松城の
水攻めと相次いで兵糧攻めを用いて成功させていった。これらの作戦に、有岡城の
幽閉での粗末な食事が心底こたえ、兵糧攻めの威力を死の寸前まで体感した官兵衛の
多大な影響があった事は十分考えられる。とのお話でした。

 最後にレジュメより戦国武将たちの寿命と死因を参考の為書いて置きます。

黒田長政56歳、膈噎。(今の胃がん又は胃・十二指腸潰瘍) 竹中半兵衛(重治) 36歳、結核と言われているが胃潰瘍か。
荒木村重52歳。 中川清秀42歳。
宇喜多直家54歳。 九鬼嘉隆59歳。
毛利元就75歳、胃がん。 毛利輝元73歳、腹の詰る病。
吉川元春57歳、癰(よう)。 小早川隆景65歳、くも膜下出血。
武田信玄53歳、膈。 上杉謙信49歳、脳卒中。
蒲生氏郷40歳、肝硬変。 筒井順慶36歳、胃潰瘍。
織田信長49歳。 豊臣秀吉62歳、脚気衡心。
前田利家62歳。 福島正則64歳。
加藤清正50歳、脳卒中か。 池田輝政50歳。脳卒中。
徳川家康75歳、胃がん。  

  戦いに明け暮れ、また医学知識も乏しかった当時と現代の差を改めて痛感致しました。

 

 

 

セミナーの資料です。



 


ページデザインS53年卒岸政輝 & ページ作成S50年卒谷村瑞栄