相続人たちが分け方について相談し、円満に合意する、というのが、遺産相続の
理想ですが、現実にはそうは行かない、ということで、話はいきなり本題に入りました。
まず、法律では、被相続人(故人)の配偶者が2分の1を相続し、残りを子どもたちで
分割する、というのが原則になっていますが、子どもがいなくて、被相続人の親がいる
場合、あるいはその兄弟姉妹がいる場合、さらに、子どもはいたが、すでに亡くなっている
場合など、いろんなバリエーションがあります。さらに、養子縁組みしていた場合は、
そこの孫が、縁組み以前に生まれていた場合には、孫として認定されない、とか、
内縁関係は相続の権利が全くない、とか、愛人の子どもはどうなるのか、など、特殊な
ケースだが、結構あるうる事例がユーモアたっぷりに紹介されました。
そんな、ややこしくなりそうな場合にはぜひ「遺言」が必要です。簡単に済ませるのなら、
自筆の文書に日付、押印して、保管するだけでいいのですが、いざ執行という時に、相続人
全員が集まって、家庭裁判所で検認するという手続きがとても厄介で、さらに開封した遺言書
の形式・内容が不適切で、いたずらに混乱を引き起こすこともありえます。
それを避けるために、公証人役場で「公正証書遺言」を作成してもらう方法があります。
手続き費用など、10万円ほどかかりますが、プロのチェックを受けた遺言書が作成でき、
家裁での検認も不要で、執行がとても速やかになるそうです。
最近、銀行が「遺言信託」という、至れり尽くせりの商品を売り出していますが、遺言作成に
30万円、執行時に150?200万円程度の費用がかかるので、それに見合っただけの遺産が
ない場合にはメリットがないだろうとのことでした。
また、相続には「資産」だけではなく、「負債」も含まれているので、借金の方が多い場合には、
「相続放棄」の手続きをして、その肩代わりを避けることができます。ただ、その期限は死後
3ヶ月以内、と忙しいので要注意。
最後に、相続税の基礎控除額が引き下げられたので、これまで関係なかった層にまで
相続税がかかってくるようになってきたとのこと。税理士に相談すると、いろんな方法がある
ようですが、かつて、相続税逃れのために、マンション投資をした人が、バブル崩壊に遭遇して、
不動産は暴落、銀行の取り立ては厳しくて、全財産を失ってしまったという例もあるので、
無理なことはすべきではない、という忠告を頂きました。
むかしから弁護士志望を公言していたのに、なぜか検察官になった平井君。その職を全う
したのち、公証人を経て、「念願の」弁護士を開業した、その闊達かつ誠実な語り口は、
高校時代とまったく変わっていませんでした。
会場は、相続の問題が現実味を帯びはじめた年代の面々で超満員、講演後の質疑応答は
やむことを知らず、さらに時間切れ後も、講師をつかまえて何やら深刻そうに話し込む列が
できるなど、いつになく、盛況だったようです。
食事タイム終了後、急遽、場所を変えて催された、同期の「ミニ同窓会」の席では、
検事時代の、テレビドラマ顔負けの苦労話や裏話も聴かせてもらい、一同、大いに胸を躍ら
せました。平井君、どうもありがとうございました。