講師の田中(旧姓・尾山)さんとは1学年の時、同級でした。その田中さんがこんなに近い
ところで重責を担って活躍しておられるのを、うかつなことに知りませんでした。
宇宙のことはマクロコスモス(大宇宙)、人体のことはミクロコスモス(小宇宙)とも呼ばれ
ますが、マクロコスモスのほうでは、手の届かない天体の真の姿を知るのに、それらから
送られてくるさまざまな波長域の電磁波や重力波やニュートリノなどを手がかりにします。
最近ではブラックホールの連星の合体の際に発せられた重力波とガンマ線バーストとが
検出されたことが話題になりました。
ミクロコスモスのほうも同じなのですね。外からは見えない人体内部の様子を知るために、
光(内視鏡)・超音波(エコー)・磁気(MRI)・X線(CT)・アイソトープ・ポジトロン(PET)など、さま
ざまな手段が使われます。講師はその中でも特に、超音波大好き人間なのだそうで、
講演でも超音波診断の利点や適した対象をいくつか挙げられ、その画像をどのように読み
解くかについて、わかりやすく説明されました。
われわれの世代にとっては特にそうですが、若い皆さんにとっても、健康と病はもっとも
大きな関心事だと思います。「がん」はその最たるものですが、エコーではカラードプラ法が
威力を発揮するということを、画像を示して説明していただきました。
宇宙空間は音波が伝わりませんし、長さのスケールの理由もあって、電磁波(光速)に
おけるドプラ効果が使われますが、人体の場合は超音波(音速)に対するドプラ効果が使われ、
血流の向きと速さをカラー画像で表示することにより、多血性か乏血性かで、腫瘍の種類を
区別することができるというお話でした。
講師がこのところ研究されている膵臓のがんについては、小さい時は特にCTよりエコーの
ほうが有利だそうです。膵がんは近年死因に占める割合が増加しており、致死率も高いので、
質問にも取り上げられ、それに対して、(奥まったところにあるため、というのは容易に想像が
できますが)臓器そのものが小さいため、発見できるほどの大きさになった時には治療が
難しいステージになっている場合が多いことなどについて補ってくださり、とても参考になりました。
胆管がんについての質問に対しては、しこりを作るタイプは見つけやすいが、管に沿って
広がるタイプは見つけにくく、最後に残った難問であるとのお答えでした。
田中先生のような方がおられるだけで、なんだか、ほっと安心した気持ちになれます。今後も
われわれにとって頼りになる優れた診断法・治療法を発展させていっていただきたいものです。