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演題
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なぜ、どうして、どのように英語を学ぶか −異文化理解の断片ー |
講師 |
林 洋子氏(昭和27年卒 旧姓 田島) |
カンサス大学大学院卒 元電通勤務、兵庫医大、近大講師など |
ふだんお見かけする物静かなたたずまいとは違い、林氏の語り口には説得力のある力強さを感じた。 1.なぜ英語なのか 二週間に一つずつ言語が消滅すると言われる中で、ドルが国際通貨であること、学術論文は英語で書かないと世界に認められないこと、20世紀初頭にはイギリスの植民地が世界の陸地の4分の1を占めていたこと、今のアメリカが世界一の強国である事を考えても現在の世界共通語は英語であると認めないわけにはいかない。 (しかし、栄枯盛衰は世の常、アメリカが衰退して将来、中国語や他の言語が世界共通語になるかもしれない。ただ日本語がそれにはならないことは確かだろう。) 2.世界の中の日本と日本語 単一民族に近い島国である日本は独特の文化と言語を持ち、はにかんだようにすぐに微笑む日本人は他国からは理解されにくく、「何を考えているのか分からない」と気持ち悪がられさえする。イギリスには日本が存在しない地図もある。日本語では通訳を介さないと他国とコミュニケイトできない。 3.英語を学ぶ目的・理由 ・英語はコミュニケイションのための道具であり手段である。 他国を理解し、他国に日本と日本人を理解させる。そのためには当然自国を理解しておかなければならない。日本人は英語を使ってどれだけ自分の言いたいことを相手に伝え、交渉や説得が出来るだろうか。 日本人である限りは日本語の能力以上の英語は話せる訳はない、したがって、国語にもっと力を入れるべきだと林氏は語る。 ・日本と日本人の存続のため いまや食料の半分以上は輸入に頼っている。以前の供給国であった中国、インド、ロシアなどが消費国になってきている。温暖化や森林の伐採、砂漠化など生態系が変ってきている状態でもし戦争にでもなったら、どういうことになるのだろう。 核なし、石油なし、食料の半分は手に入らない・・・考えただけでぞっとする。 そのようなことになる前に世界の要人達を相手に丁々発止と渡り合えるだけの見識と英語力を持った人物をもっと育てることが急務である。。 4.どのように英語を学ぶか。 ・自分で考える力ー主体性を養わねばならない。国語が基礎になる。 ・相手の立場に立てるかー客観性(異質なものを排除しない) 第二次世界大戦のとき、アメリカは敵を知るにはまず言語からと優秀な大学生を集めて日本語の勉強をさせた。したがって日本軍の無線など全て解読されていたという。敵性語だからと英語を使う事を禁止した日本との違いはどうだろう。 ・英語の背景(文化・社会)を知るー異文化理解 多様な価値観が存在する世界では「絶対」とか「間違いない」という概念は存在しない。 ・三週間で英語がしゃべれるようになる脅威の英文法、などという書物が店頭に並んでいたりするが、そういうことはありえないということは「日本語が三週間で理解できるか」と考えれば分かるだろう。 5.日本語と英語の違いー民族・文化の違い 語族、書記体系、音韻体系、統語、思考構造、皆違う。 例えば5番目の画像「耳に聞こえない音は発音できない」(トマティス 仏 言語・音声学者の資料)によると、日本語は125〜1500Hzであるのに対して、英語(右上)は2000〜12000Hz、フランス語(左上)は100〜300Hzと1000〜2000Hzとの2箇所に分かれている。ドイツ語(右下)は100〜3000Hzで、スラブ系言語(左下)はなんと100〜8000Hzの広範囲を網羅している。これは、スラブ系の人の中に語学の天才がいることや、日本人やフランス人が英語が苦手な理由の一つと言えるであろう。 ・論理的vsあいまい ・同じ言葉でも意味するものは・・・例えば慈悲や情けの考え方。 ・英語に訳すと悪い意味になるものも商品名にする不思議 ポカリスエット(汗なんか汚くて飲めない)、クリープ(同発音のcreepとなると「虫唾がはしる」という意味になる)。 ・訳せない日本語、訳せない英語 「どうぞよろしくお願いします」「失礼しました」「頑張って」などそのまま英訳しても使えない。 ・和製英語は日本語。 和製英語などと「英語」という言葉がついているために英語かと思っている学生がいる。 ・気をつけたいこと ありすぎてとても書ききれないが、一つだけ。お互いの思い違いでトラブルが起きた場合、日本人は「ま、いいか」と十分に申し開きをせずに"I'm sorry."といってしまうが、それは自分が悪いと認めたことになるので、してはいけないことの一つである。 とても1時間半では足りなかった講義、林先生にはぜひともまた話していただきたい。期待しています。 |
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