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演題
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遙かなるシルクロードを想う 玄奘三蔵の道 |
講師 |
安田 順惠氏(昭和29年卒) |
奈良地方家庭裁判所調停委員 |
歴史や地理の苦手な私に果たしてリポート係が務まるのだろうかと不安を感じていた。にもかかわらず、奈良薬師寺の管長夫人でもある安田順惠氏の気さくな語り口の話にどんどん引き込まれていった。 しかし私にとっての玄奘三蔵というのは孫悟空に出てくる三蔵法師でしかない。そこでまず玄奘三蔵の検索から始めねばならなかった。。602-664年中国唐代初期の仏教僧。13歳で出家し玄奘と名のる。629年国禁を犯して(当時中国では国外に出ることを禁じられていた)求法の途についた。伊吾から高昌(トルファン)、クチャから天山山脈を越えて北路に出た。次にアフガニスタンから北インドに入り中インドのマガダ国ナーランダ寺にいたる。そこに5年とどまり瑜伽唯識の教学を極めた。その後インド各地に求法と仏跡巡礼の旅を続け、多数の仏典を収集し帰路につく。長安に帰り着いたのは17年後であった。帰国後は直ちに訳経を開始し、20年間かけて行った。旅行記に「大唐西域記(だいとうさいいきき)」がある。 西遊記に出てくる三蔵法師だが、それは経、律、論に精通している僧侶に付ける敬称でそれは玄奘に限ったものではない。しかし特筆すべき功績を残した僧侶として三蔵法師といえば玄奘を指すようになったということだ。 と、ここまでは予備知識。 以後は安田氏の資料にそってリポートする事にする。 ○シルクロードというのは東西文化交流の道の象徴的表現。その命名者はドイツの地理学者フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェン。著書『シナ』のなかでSeidenstrassen(ドイツ語のシルク道)と書いたことに始まる。 ○玄奘三蔵法師のシルクロードについて。 求法の旅については上記にある。その場所場所を合成して描かれた平山郁夫画伯の日本画が薬師寺に奉納され、拝観者に公開されている。版権の都合でその絵を見せてもらえなかったのが残念である。玄奘三蔵法師の頭頂骨の一部が薬師寺に分骨されたのが玄奘三蔵院伽藍にまつられている所以である ○玄奘の今日的な意味。これは平和の重要性である。 今は玄奘のたどった道をすべて安全に通ることが出来るとは限らないのだ。 ○シルクロードに翔ける夢 @石油開発(タクラマカンを駆け巡る沙漠車、タクラマカン沙漠南北横断沙漠公路の開通1995年約600キロ)と地下水脈の確認。 この「沙漠」の「沙」の字こそが『水が少ない』という意味で安田氏にとってのこだわりである。 A沙漠の緑化(タクラマカンを100年かかって緑化する運動:遠山正瑛鳥取大学名誉教授)。山西省黄土高原の緑化(緑の地球ネットワーク高見邦雄氏) B遺跡の修復・保存、発掘調査。(例 キジル千仏洞の修復保存運動並びに尼雅ニヤ遺跡の発掘調査とその成果は中国五大発見とされる)、ダンダンウイリック遺跡で2002年安田氏らの壁画発見に伴う調査開始。(小島康誉氏)この壁画は「西域のモナリザ」と名づけられた。 Cシルクロードラリーの実現(成田正次氏苦節10年遂に2000年10月実現) Dシルクロードの音楽演奏:NHKの番組の音楽を担当した喜多郎氏をはじめ多数。その中に岸田善三郎・晃子(仕舞いと地謡)もある。 Eタクラマカン沙漠 沙漠公路でのソーラーカーラリーを夢見て。 F(財)なら・シルクロード博記念国際交流財団の活動、友の会発足。樋口隆康氏『シルクロード学提唱』 G玄奘三蔵顕彰会(薬師寺の夢・順惠の夢):詳しい事は「薬師寺」のホームページに載っていると思う。 沙漠というところはカメラも水中カメラを使わねばならず、移動はラクダである。目にも口にも砂が入ってくる。 「それでも沙漠は一度行ったらまた行きたくなるところです」とおっしゃった岸田先生の言葉が印象的であった。 この22日から安田氏、岸田氏の一行はまた何度目かの探索の旅に出られる。 |
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安田順惠氏と岸田善三郎氏 を囲んでの記念撮影を 横から失礼。 岸田先生に歴史を習ったら 私も歴史好きになって いたかな? |
タクラマカン沙漠で舞われる岸田氏 |
祈りをささげた壁画発見の時。 |
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ラクダで出発の朝。 |
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テント |
探索の一行 |
砂嵐が来ると葉っぱは散ってしまう。 |
タクラマカン沙漠を南北に横切る公路 |
公路を砂から守るためのネット |
道を砂から守るために両側に工夫。 |
30m〜50mの幅で葦を方形に刺している |
こういう葦を何年かに一度刺しなおす |
沙漠車 |
ここは湖が干上がったところ。 |
こちらはローラン岩沙漠である。 |
遺跡だけを写すことは出来ない。 記念撮影はできるらしい。 |
これも遺跡を撮りたいが故の 記念撮影か。 |
アフガニスタンの女性の民族衣装。 中から外は良く見える。意外と重い。 |
タクラマカン沙漠は日本の86%ぐらいあって、その意味は「入ったら出られない」らしい。 中国、沙漠に魅せられている人は多く、それらに関するホームページが多いのに驚いた。 写真展の開催、図書出版『玄奘三蔵のシルクロード』、学会発表、記念講演などで安田氏はお忙しく活躍中である。 |