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大坪 清氏 |
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![]() このオフィスに、私を含めて大手前卒業生が4人います。女性で理事が1人。部長に2人。 入社3年目の社員が1人、大手前から各大学を経てレンゴーへ入ってきました。 ![]() 私が着任してから入ってきた者は1人です。大手前卒はこのレンゴーでは活躍しています。 レンゴーという会社はご存じのように、101年前に井上貞治郎さんが艱難辛苦の末、 日本で段ボールを作ろうと決め、創業してそれで今日があります。 もともと紙を貼り合わせて容器にしているのを日本でやり始めた時に 何という名前を付けようかと考えた時に、貞治郎さんはナマコ紙にしようか、 コルゲートとしようかあれこれ考えた末、だいたい英語で波の付いた紙をコルゲートというから、 段の付いたボール紙ということで「段ボール」という名前にした。 貞治郎さんが商標登録してレンゴーしか使えないということにしておけばもっとよかったのですが、 非常にオープンマインドの人で、いいやということで「段ボール」 という名前を誰が使ってもいいということになったのです。 昭和42年に、組合問題で多くの企業でストライキが起こり、 レンゴーもピンチの時期がありました。淀川工場を完全に閉鎖されて機械が動かせないスト騒動がありましたが、 それを解決するのにいろんな人に協力をお願いしました。 今でいう生産性本部の力も借りて解決したのですが、 いま僕が関西生産性本部の会長をしているのも、そういう背景があるのです。 それ以降はずっと良くなってきたのですが、その間にもいろいろと、会社というのは株式会社なので、 株式をいろんな人に持たれたり、今でいうTOBみたいなものがあったりして、 一時レンゴーも株式問題でピンチになったりしましたが、 そういう時にも私が住友商事にいながら問題の解決に関わっていました。 本当は先代社長の長谷川さんに、当時から、次のレンゴーを頼むと言われていたが逃げ回っていたのです。 ![]() なぜ住友商事に入ったのかというと、ひとつは海外へ行きたいのと同時に、 住友商事のバレーボール部には美人が多かったので、住友商事に入ったのですよ。(笑) でも実際に入ったら、美人だと思ってた子がみんな先に結婚してしまって、残念でした。(笑) 住友商事に入ってすぐに海外に行けると思ったのに、最初に辞令をもらったのが、 摂津板紙への出向辞令でした。そういうところへ出向して、現場に入って、 なぜこんなことをせなあかんのかと思いつつ仕事をしていました。 その後、レンゴーでストライキ事件が起こったのです。 淀川工場で労働争議が起こったわけですが、そのちょっと前に 会社側の先頭に立っていた長谷川さんに出会って、それからずっと今日まで来たわけですが、 何となく運命みたいなものを感じます。 ![]() 必ずしもそうではありませんが、住友商事に入って3カ月の間に、 新入社員に出向辞令を出すのは会社始まって以来のケースだったそうです。 私は何をしでかすかわからんというのがあったのではないかな。(笑) ![]() そういうことかどうかわかりませんが、そこへ行ったということで、 そういう経験をしたことは非常によかったと思います。転勤も一種の運ですね。 運は、寝て待つものではなく、運とは練って待つもの、練らないといけません。だから我われは運が良かったと言いますが、 そこへ行くまでに練っているし、努力しているのだと思います。 ![]() 一番いけないのは差別をしてはいけないということです。住友商事時代の後半、海外に出た時に、 海外の勤務先では、地元の人間、日本から行っている人間と、 それぞれに生活があるわけですが、基本的な賃金体系は日本人と現地の人間とは違います。 しかし、国によってもともとの賃金体系が違うのはやむを得ないが、 たまたま一緒に出張した時の出張手当、あるいはフリンジベネフィットという言葉を使ってもいいと思いますが、 この手当に差をつけるというのは差別です。 私は宿泊費まで違うということはよくないということで、これを統一しました。 これは何処でも同じことなのですが、南アフリカのアパルトヘイト制度はそれなりに制度化されていました。 今は違いますが、いわゆる向こうにいるズールー族の黒人と、オランダをベースにした白人は、 夜に住む場所、ホームタウンが違います。それはそれで人種が違うからいいとしても、 働いている時の条件が全く違うというのはいけません。彼らが言うのは、セグリゲーションはいい、 分離政策はいい。しかし、ディスクリミネーション、差別はいかんという。 ディスクリミネーションはやっちゃいかんが、 セグリゲーションはいいというのがアパルトヘイトの政策です。 アパルトヘイト政策がいいとは言わないですが、格差格差と言う中で、 格差の中身を吟味されて表現しているかが非常に問題です。 レンゴーとセッツが合併して、レンゴーのなかで雇用条件、労働条件いずれも旧セッツの方が低く、 旧レンゴーの方が上でしたし、組合も別々でした。 これは完全なディスクリミネーション、差別となります。会社が1つである限り、 労働組合が2つ存在するのはおかしい。それを1つにする時に、 どのように調整していったらいいかというと、バランスを図って上と下を一緒にするということになる。 これは頭の仕事と力の仕事の両方が必要で、力仕事でもあります。 ![]() 新聞にもよくでているからご存じだと思いますが、 リーマン・ショックが起こって、大企業を先頭に派遣切りをどっと始めました。 私はそれではいけない。本当に日本全体の社会を活気づけるにはどうしたらよいのかと考えておりました。 実際に派遣で苦しんでいる人がいる。そもそもこの問題の起源は何でしょう。2006年に派遣法が改正され、 2009年には長期の派遣は製造業では認められないということになりました。 これを切ったり、上手くごまかして請負にかえるというのは、法律違反でもあり、 日本全体としてもよくない。それなら、一旦正社員化したらどうかと考えた結果、 レンゴーでは一挙に1000人の正社員化に踏み切ったわけです。 非正規を正社員化するわけですから、退職金の引き当ても積んでいかないといけませんし、 固定費は年間5億円ぐらい増えます。 ところが一方で、我々はいかに効率化、生産性を向上させるか、 ロスをいかにミニマイズさせるかを常に考えています。 我々の仕事は製造業であると同時に加工業ですから、 その加工業におけるロス率をいかにミニマイズさせるかは非常に重要なことです。 普段からロスをミニマイズさせるために、いろんなことを言ってやらしていますが、 結局、非正規雇用と正社員との間の意思疎通、コミュニケーションが、 通じていると思っていたのですが半分しか通じていなかったのでしょう。 正社員化することで半分しか通じていなかったのが、残りの半分も通じだしたのです。 ロス率が一挙に低下して、今まで考えられないような数字が出だしたのです。 賃金つまり固定費は上がりましたが、一方でそれ以上にコストダウンが進みました。 10年3月期は創業以来の決算数字になりました。加工業でもこれだけの利益が出せるんだと。 やはり、いろんなところでそれなりに考えながらやれば、人間というのは1つの輪が出来上がると、 非常に素晴らしい力が発揮できるということだと思います。 ![]() 最近、会社に入ってくる人は、女性の方が成績がよいですね。 率先として女性を採れと言っています。女性の技術屋さんも増えていて、 採るときに研究所に配属もしますが、現場の仕事もやらせます。 機械を回したり、段ボールをつくるコルゲーターを回したり。 やってみるか?と言うとやりますと言って、ものすごく変わってきています。 ![]() うちは結婚しても継続して働いていいと言っています。 もっと結婚しろと言っているくらいです。3人目の子どもも作れとも言っており、 子供が誕生したら100万円出すと言っています。 この制度をスタートさせたのが4年前で、統計を取ったところ 4年前までは毎年3人目を作っていたのは1万人ぐらいいる中で、 1年に4人か5人でした。100万円を出すと言ってからは、 これが30人から40人に増えました。3年間で103人の3人目が生まれています。 やっぱりインフラを整えるのが重要です。仮に30人、40人に100万円出したとしても 3000万円です。これはいい制度だと言って多くの会社が聞かせてほしいと言ってきました。 いわゆる子育て対策、ばらまき対策を色々するのはいいですが、企業をいかに成長させるか、 成長戦略を持たないと、今の民主党政権では、今の日本はちょっと危ういと感じますね。 民主党そのものが悪いと言うのではなく、ごく一部が悪いと思います。その辺のところを取り除いて、 我々の言う通りにすればもっとよくなると思うのですがね。(笑) 女性が結婚して、勤めている間に子どもを産んで、2年ぐらい休まなくてはいけない。 マタニティリーブといって、イギリスにはその制度があるのですが、その間有給で、 復帰した時には2年前と全く同じ条件で再雇用が出来るという制度を作っておかなくてはいけない。 うちの会社はすでにやっていますが、それを日本でもやれと言っています。 女性もそういう制度を利用して、子ども産んでもまた元の職場に戻るということをしています。 地道な努力を各企業が行なっているのです。 ![]() だって段ボールハウスってあるじゃないですか。 困った人が住んでいるところを段ボールハウスって言うでしょ。 私が出たテレビ番組の「がっちりマンデー」を観てもらうと レンゴーのやっていることが全部分かるのですが、メジャー産業である、 多くのトップメーカーの製品をパッケージする際、いわゆる段ボールは外装となります。 そして内装の製品、キャラメルなどを包む内包装、小箱もレンゴーはやっている。 また、皆さんがコンビニなどで買われるおにぎり、あの包みもレンゴーグループがもっているパテントです。 三角のサンドイッチを、スーっとあけるあの包装もレンゴーグループの考案です。 要はパッケージに関する内装から外装まで、レンゴーに言えば全部解決する。当社のアイデンティティは、 "パッケージングソリューションカンパニー"と言っています。内装から外装まで全部一貫して レンゴーに頼めば出来るというわけです。 中に物を詰めて家庭に届いた後はゴミに出されます。出された段ボールはどうなっているかと言いますと、 古紙業者を通じてレンゴーの製紙工場に戻ってくる。 製品が消費者に届くまでのいわゆる表の流通、これを僕は動脈物流と言っています。 使い終わった空き箱その他が、レンゴーに戻ってくるのを静脈物流。 動脈と静脈の両方にレンゴーが関わっているから、しっかりとリサイクルできる体制が出来上がっている。 リサイクルをしながら、同時に資源は大切だからリデュースもするということで、 出来るだけコストをセーブするよう効率的な最適包装を常に考えている。 レンゴーが企業として非常に強いのは、こういうところにあると思います。 ![]() 紙の生産では中国が世界で1位。最近までは、1位がアメリカ、2位が日本、3位が中国でした。 ここ数年で1位が中国、2位がアメリカ、3位が日本になりました。おっしゃるように、 中国は原料確保を考えずに工場をどんどん増設していく。だから原料としてパルプがない、 古紙がないということになる。チリで大地震が起こって、チリでパルプが作れないから、 中国で値段が上がる。日本の古紙を持ってこいということで、古紙の値段がドンと上がる。 中国がクシャミをすれば日本の相場が変動するということがあるのですが、 これではいかんということで、今は安定させる方向に動いています。 次ページへ> |