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ご結婚されたとき湯川秀樹博士とはどのようなことをお話されましたか? 結婚した翌日、「私の家は医者の家ですから、医者の妻のことは判っているつもりですが、学者の妻は何を心掛ければいいでしょう」というと、秀樹さんは「僕が学問だけに専念できるように時間を作ってくれればいい」と申しましたので、それをひたすら守りました。男の子が二人できましたが、秀樹さんは夜中に頭がさえる人で、夜中にアイデアが浮かぶと電灯をつけるので、その都度、子供が起きて泣かないように別の部屋へ移動するような、そんな生活が半年ほど続いたりしました。 そのほかいろんな苦労されたのではありませんか? 私は秀樹さんが研究以外のことで気を煩わせないように、ただそれだけに気を使いました。私の父も秀樹さんの研究に内助の功がありました(笑)。無給のときも秀樹さんはよく本を買いました。ある時、ふと見ると本の間に本屋の請求書が挟んであったので、その代金を私の父に支払ってもらいました。 研究に精力を使い果たすせいで、秀樹さんがいつも青白い顔をしていたのを、父が診察して食事時間の不規則なのを改めさせ、食事も脳みそを作るタンパク質と野菜中心にしたほうがいいよと、料理する私にサジェッションしてくれました。数ヶ月して友達から「湯川君は顔色が良い」といわれるようになりました。 秀樹さんの研究がうまくいったことを聞くと、父は、私が生まれる前にドイツで医学博士の学位をとった経験から、研究成果は早く世界に発表すべきだというアドバイスまでしていました。 ご主人がスランプのときにはどのような言葉をおかけになりましたか? 「一所懸命にしはったんやから、仕様がないでしょう。クスンとならんと大いに続けてやりましょうや」という感じですね。 プラス志向で、湯川博士といいコンビだったのですね。 |