国際グリム賞は、1986年に大手前高等学校創立100周年記念事業として金蘭会の基金により創設され、一般財団法人 金蘭会、大阪府立大手前高等学校同窓会 金蘭会および一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団の主催で、二年に一度優れた児童文学研究者に贈られる賞です。 |
第17回受賞者(2019年) Prof.Okiko Miyake 三宅興子氏は、1938年に大阪で生まれ、大阪市立大学大学院修士課程終了後、1960〜83年に大谷女子短期大学で、1983〜2007年に梅花女子大学で教鞭をとり、2007年に梅花女子大学名誉教授になる。 国際的な児童文学、絵本の優れた研究者であり、多様で国際的な児童文学研究活動を積極的に組織・運営してこられた。 1983年『児童文学はじめの一歩』は、日本児童文学学会奨励賞を受賞し、1993年に日本初のイギリス絵本の通史『イギリスの絵本の歴史』は、日会本児童文学学会賞を受賞するなど、多くの著作があります。 また、多くの研究プロジェクトも立ち上げ、日本の研究者に世界への目を開かせる指導を行ってきました。それらの成果には『アメリカの児童雑誌「セント・ニコラス」の研究』(1987年)もあります。絵本学会会長、日本イギリス児童文学会会長を歴任し、大阪国際児童文学振興財団の創立から評議員として関わり、2010〜2015年に理事長を務めました。 |
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第16回受賞者 (2017) Dr.Roberta Seelinger Trites アメリカ合衆国。1991年に、米国ベイラー大学で、作家マーク・トゥェインの研究で博士号を取得。1991年から、イリノイ州立大学文学部で教鞭をとり、2013年からは、Distinguished Professor(特別教授)である。 主要著書で邦訳されているのは『ねむり姫がめざめるとき―フェミニズム理論で児童文学を読む』(1997年)、『宇宙をかきみだす―思春期文学を読みとく』(2000年)があり、思春期文学、ジェンダー研究、歴史的視野からの文学研究を理論的なアプローチによって行い、児童文学研究の分野を開拓してきた。 また、2000〜2004年には、アメリカ児童文学協会の機関誌「季刊 童文学教会誌」の編集長を務め、2008年には、アメリカ児童文学学会の研究大会も開催し、2006〜2007年には会長を務めた。このように、組織的にも、研究者の育成という意味でも国際的に貢献している。 |
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第15回受賞者 (2015) Dr.Perry Nodelmanu 1942年に、カナダ・トロントで生まれ、1969年にアメリカ・エール大学で、ヴィクトリア朝文学についての研究で博士号を取得されました。 カナダでは、1968年から37年間、カナダ・ウィニペグ大学文学部で教鞭をとり、2005年に名誉教授に就任されました。 主要著書には、『絵本論』(1988年)、『児童文学の喜び』(1992年)、『隠された大人:児童文学を定義する』(2008年)で、特に『絵本論』は、絵本研究の先進的な基礎文献として国際的に高い評価を得ています。 |
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第14回受賞者 (2013) Dr.Kimberley Reynolds 1975年アメリカ・ロングアイランド大学卒業後、イギリスにわたり、サセックス大学で19世紀の児童文学について学び、1989年に博士号を取得。1990年に英国ローハンプトン大学に国立児童文学研究所を創設、初代所長となると同時に同大学で児童文学の教鞭をとる。2004年には英国ニューカッスル大学に移り、若手研究者の育成、支援を継続すると同時に、「セブンストーリーズ」(英国・子どもの本センター)の理事に就任。 |
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第13回受賞者 (2011) Dr.Jiang Fun 蒋 風 教授は、1925年中国生まれ。 1952年から浙江師範大学で教鞭をとり、中国で初めて児童文学研究ができる大学院を同大学内に創設、「中国児童文学発展史」(2007)、「世界児童文学事典」(1992)等、中国や世界の児童文学に関する研究書を多数執筆している。また、2010年10月に中国で行われた第10回アジア児童文学大会の開催に大きな役割を果たした。 |
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第12回受賞者 (2009) Dr.Teruo Jingu 神宮教授は、児童文学の研究、創作、翻訳において、傑出した日本の児童文学者であり、国内外の児童文学作品・研究についての幅広い批評活動を行っておられます。児童文学史、比較児童文学、日本における世界の児童文学の受容等の学術的な研究等によって、児童文学研究の促進と発展に多大の貢献をしてきたと同時に、児童文学作品の解説、紹介、多数の重要な児童文学作品の翻訳を通して、広く児童文学を普及してこられました。また、長年にわたって、大学、大学院での児童文学研究指導を行ってこられ、1970年度国際アンデルセン賞選考委員を務めるなど、児童文学普及のため、国際的にも活躍されています。また、これまでに、これまでに日本児童文学者協会賞(1964)、児童福祉文化賞(1968)、社団法人日本児童文芸家協会・児童文化功労賞(2008)等を受賞されました。 |
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第11回受賞者 (2007) Dr.John Stevens ジョン・スティーヴンス博士(豪・マコーリー大学教授)は、児童文学研究の理論派として活躍され、国内外で幅広い活動をされています。常に世界各国の研究者とともに共同研究を行い、自国のみならず、アジア、ヨーロッパの研究者の育成にも尽力されています。また、国際児童文学学会会長(一九九七〜九九)、オーストラリア児童文学研究会会長(二〇〇六〜)などさまざまな学会でも要職に就かれ、児童文学研究において多大な貢献をなされています。 |
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第10回受賞者 (2005) Dr.Maria Nikolajeva マリア・ニコラエヴァ博士は、1952年旧ソ連のモスクワ生まれ。1981年スウェーデンに移住し、市民権を得、現在ストックホルム大学教授として、文学・歴史学を教えておられます。比較児童文学の優れた研究者である博士は、児童文学史・ファンタジー・絵本論など注目すべき偉大な著作を多数発表しておられ、国際児童文学学会の会長として5年間(1993〜97)、会の発展に多大なる貢献をし、児童文学協会(米国)では紀要の国際コラム(各国の研究状況を紹介)を担当されています。そうした北欧圏にとどまらない活動が評価されました。主な著書に「児童文学における登場人物のレトリック」(2002年)、「神話からのつながり・・児童文学における時間」(2000年)など、児童文学に関する著書・論文を多数発表されています。研究には、「長くつ下のピッピ」の作者アストリッド・リンドグレーンや、「ムーミンシリーズ」の作者トーベ・ヤンソンの研究なども含まれます。 |
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第9回受賞者 (2003) Dr.Peter Hunt ピーター・ハント博士は、英国における卓越した児童文学の研究者であり、児童文学の研究を世界的規模で発展させた第一人者です。世界の研究者と交流を図り、「世界児童文学事典」をはじめとする児童文学の研究入門書や啓蒙書などを編纂されました。 また、ミシガン大学客員教授をはじめ、世界各地で児童文学の講義を行うなどして、その振興に大きく寄与しています。こうした研究・業績により、英国の児童文学研究者の中で初めて主任教授となり、児童文学研究の地位を確立させました。同博士は、1945年英国生まれ、英国カーディフ大学教授として英文学と児童文学を教え、主な著書に「児童文学批評の展開」、「子どもの本の歴史」、「児童文学入門」、など著書や論文を多数発表されています。 |
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第8回受賞者 (2001) Dr.Jean Perrot ジャン・ペロー博士が受賞されたのは、児童文学を子供の遊びの一つとして捕らえるユニークな児童文学論に基づき、二十数年来児童文学研究を行い、特にアジア諸国の作品をも視野に入れた国際的展望を持つ絵本の研究が高い評価を得られたためです。また、パリ第八大学退官後、「国際シャルル・ペロー研究所』を設立され、国際的な内容・規模の児童文学専門講座を毎年二十数回開講して児童文学研究の振興に貢献し、国際的にも高い評価を得られています。1925年フランス生まれ、1994年までパリ第八大学比較文学教授。研究領域は児童文学、比較文学、言語学と幅広く、国際児童文学学会世界大会には毎年出席し、ほぼ毎回発表されています。 |
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第7回受賞者 (1999) Dr.Jack Zipes ジャック・サイプス博士はグリム童話やペロー童話をはじめとするおとぎ話が、欧米社会の文明化や、子供たちの教化・社会化に果たした役割を社会文化史的な観点から解釈し、革新的な理論を展開して、おとぎ話研究に新たに一石を投じました。更に児童文学研究のみならず、文化研究、メディア研究、ジェンダー研究に多大な示唆を与えています。その著作は英米圏だけでなく、ドイツ語、フランス語、スウェーデン語、ス終え隠語、日本語に翻訳出版されており、諸国で広く講演も行われています。とにかく世界的にも著名であり、以上のことから博士の研究活動の影響の大きさ、広さ、深さが窺えます。また博士は児童文学批評誌「ライオンとユニコン」の編集者として長年活動され、児童文学、児童劇の研究者として、またストーリーテラーとしてその活躍は目覚ましいものがあります。 |
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第6回受賞者 (1997) Dr.Theodor Brüggemann ブリュッゲマン博士はケルン大学の名誉教授。ヨーロッパの児童文学の歴史家として、 昔の児童書についてのエッセイを多数執筆され、児童文学の歴史研究におけるパイオニア的存在です。 博士は児童及び青少年文学の研究専門職として、この分野に新たな基準を設置するなど、 同分野の発展に多大な貢献を果たされました。具体的にはケルン大学に児童歴史研究センターを創設し、 そこで博士の指導により「児童文学と若者の文学のためのハンドブック」全四巻を作成されました。 この四巻は15世紀半ばから19世紀までにわたる児童文学の歴史を網羅しており、 国内外の児童文学の歴史研究家たちに豊富な情報を提供し、ドイツ児童文学の歴史を語る時の 基礎資料にもなっています。 |
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第5回受賞者 (1995) Dr.Denise Escarpit エスカルピ女史は元ボルドー第三大学教授で、国際児童文学会会長も務めた、フランス児童文学の先駆者であります。『ヨーロッパの児童文学』『世界の児童文学』(セクジュ)『フランス児童文学作家案内』など著書多数。1927年より児童書の書評誌『Nous voulous lire!』(読みたい!)を創刊するとともに、学会における児童文学の地位の確立に貢献するとともに、行政レベルの活動にも積極的に参画し、児童文学の国際交流・振興にも力を注いだとこが評価されました。 |
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第4回受賞者 (1993) Prof.Shin Torigoe 鳥越 信氏は、1929年兵庫県生まれ、早稲田大学卒業。財団法人大阪国際児童文学館理事を務められ、著書等も多数あり、各地で児童文学、読書活動、文学教育、国語教育等に関して講演活動を活発に続けられています。氏は1950年代のはじめから児童文学の研究に専念し、多くの業績と功績を残されています。 まず、これまでともすれば印象批評にとどまった研究に対して広く文献や資料を駆使し、テキスト批判は勿論、書誌学的方法によって新しい分野を開拓したことでも知られています。「日本児童文学史年表」のほか、編者として、「校定新美南吉全集」や本年度完成した「日本児童文学大事典」など、画期的な成果といえるでしょう。 また、その過程に於いて精力的に、文献・資料の蒐集が続けられ、それは、「鳥越コレクション」と呼ばれるに至りました。後に、この膨大な貴重な資料は、大阪国際児童文学舘の設立の契機となり、現在、収蔵資料の中核となっています。 このように氏は、児童文学理論の確立など研究者・学者としての活動だけでなく、大阪国際児童文学館の総括専門員として、国内に限らず、世界的な文学運動を実成し、また、読書指導や文学教育にも啓蒙的な役割を果たして、児童文学の社会的な向上、発展に力を尽しました。 以上、鳥越氏の功績の一端をあげたに過ぎませんが、当然、国際的にも高く評価され、日本を代表する児童文学者として認められているのは言うまでもないところです。 |
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第3回受賞者 (1991) Dr.James Fraser ジェームス・フレーザー博士は児童文学と図書館学についてのすぐれた見識を基に、児童文学・児童文化の研究資料をどう収集し、どう整備するかという、「研究資料コレクション」のあり方について考察を深められ、その結論をさまざまな提案として発表されることにより、児童文学研究の基盤作りに大きく寄与されました。 また1973年には、国際的視野に立った児童文学研究の専門誌「フェドラス」を創刊、1988年までに21冊を刊行されました。これは国際的なスケールをもった、本格的な研究誌としては初めてのものであり、特にそれまで注目されることのなかった日本、キューバ、インド、モンゴルなどの情報収集につとめたことや、英、米、独、ソビエト、日本などの研究者に論評委員を委嘱して研究書の紹介・論評を行い、研究者間のネットワークづくりを推進したことなどで、高い評価を得ました。また、それまで研究対象として取り上げられることの少なかったテレビ番組、大衆児童文学等に積極的に取り組んだことも注目に値します。 博士はこの「フェドラス」の刊行を独力で続けられるとともに、1978年から3年間国際児童文学学会の会長を務められ、さらに各種展示会の企画・助言、児童文学に関するシンポジウムや国際合議での問題提起など多面的に活躍され、児童文学研究の国際的な振興に多大の貢献を果たされました。 |
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第2回受賞者 (1989) Dr.GöteKlingberg ヨーテ・クリングベリ博士は、書誌学に基礎をおいた児童文学史研究に力を注がれ、16世紀末から19世紀にいたるスウェーデン児童文学の歩みを資料の裏付けと正確な検証によってまとめあげられました。その成果は『スウェーデン児童文学1591〜1839−歴史的・書誌学的概観』(1964)及び『スウェーデン児童文学1840〜89−解題目録』として発表され、高い評価を得ております。またこの歴史的・書誌学的研究をはじめとするこれまでの研究活動の中で児童文学研究の理論と方法を確立され、科学的な児童文学研究の基盤をつくりあげられた功績はきわめて大きく、国際的にも注目されているところであります。 また博士は児童文学の翻訳・翻案の問題や、外国作品の自国への受容の問題にも取り組まれ、国際児童文学学会の第3回シンポジウム「児童書の翻訳−その現状と問題」のまとめ役を務めたほか、数点の著作によって研究成果を発表し、問題を提起されています。そのほか博士は文学教育の理論と方法についても論究を探められ、研究プロジェクトの成果を英文で発表するなど、文学教育の国際的振興にも尽力されております。 なお国際児童文学学会の初代副会長、および第2代会長を務めるなど、児童文学研究の国際的振興にも力を注がれておられます。 |
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第1回受賞者 (1987) Dr.Klaus Doderer クラウス・ドーデラー博士は、児童文学をそれぞれの社会や時代の反映であるととらえ、精神史や社会状況の面から児童文学を論ずることを中心に研究をすすめて、児童文学研究の深化と方法論の確立にすぐれた成果を挙げられました。 また1963年、J.W.ゲーテ大学児童文学研究所を創設し、その所長として、研究チームによる総合的な児童文学研究の推進につとめてこられました。特に「児童文学事典」全4巻の編集責任者・執筆者としての活躍はめざましく、この事典は児童文学の歴史的・国際的研究の基盤づくりとして高い評価を受けています。ドーデラー博士はまた、文学教育や言語教育のあり方について鋭い指摘を続けるとともに、国際児童文学学会の創立に尽力されるなど児童文学研究の国際的振興にも多大の貢献をしておられます。 |
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