清子氏)私のおばあさんなんか、伊藤博文が泊まられたりすると寝巻きに着替えずに、いつ夜中に「硯と紙を持って来い」とか、「お酒を1本つけてくれ」とかおっしゃるかもしれんから、ちっとも寝なかったと聞きました。
お悦さんですね。
清子氏)なんか事があった時のことですが、子供が生まれてまだ血が若いというかお産の後、まだ落ち着いてないときあるでしょ、その時でも東京まで行ったりしてね。もう体が紫色になったらしいですよ。そんなことがあってもやっぱり『お得意大事』だから。
うちの祖母悦は明治天皇の侍医が最期に脈を取ってくださった。お願いしたわけや無いけどお得意さんが、明治天皇のお医者さんを呼んでくれはった訳やね。ありがたいことやわね。どんなたくさんお金積んでもそんな事してもらわれへん。お得意様のお陰ですわ、光栄でした。
その代わり、普段は夜も眠らず「殿様」と言うて、お国のために働いてはるお方やから一所懸命ご奉公したわけです。今やったら「労働基準法でっせ、そんな時間ではありません」
てなもんですやん。(笑い)
昔はそんなこと無かったですものね。私ら戦後しばらくしてからその労働基準法になったんですものね。それまであらへんねやから、そら、夜も寝ずにみな働いてね。
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